◆今月のコラムライター◆
李 明源氏 NPO東海事業再生支援センター 理事 1.まずはデューデリジェンスから 事業再生は、「事業再生してください」と言われて、すぐに「ハイ、わかりました」とできるものではありません。まずは、その事業等(事業或いは企業:以下同じ)のデューデリジェンスから始めければなりません。デューデリジェンスというのは、直訳すると「正当な注意」ということになりますが、簡単に言えば、その事業等を多角的に調査することです。たとえば、マイホームを買うとき、その土地・建物について、建物に欠陥はないか?土地の地盤はだいじょうぶか?ローンを組んで毎月の返済はだいじょうぶか?そして最終的には、購入予定価額は周辺相場と比較して妥当かどうか等。マイホームを購入する前に、あらゆる方面から調査して検討すると思います。デューデリジェンスも結局は同じ事で、事業再生させる前に、再生できる事業、再生できない事業を選別して、本当に事業再生は可能かどうか、事業価値(或いは企業価値)を適正に把握しなければなりません。その作業を、デューデリジェンスと呼んでいます。 2.「財務」「事業」「不動産」多角的な価値を測る そのデューデリジェンスにおいて調査する内容は多角的です。一般的には、財務デューデリジェンス、事業デューデリジェンス、不動産デューデリジェンスの3つに区分されます。財務デューデリジェンスは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等の決算書から事業等の売上高、営業利益、経常利益、資産、負債、資本などの財務的状況を把握して分析します。事業デューデリジェンスは、事業の種別、商品の競争力及び将来展望、経営体制及び後継者等を整理します。そして不動産デューデリジェンスでは、取得原価で把握している不動産などの資産を時価で再評価して、その上で、遊休資産の活用法、収益が低迷する不動産の再生、資産のオフバランス化などを多様なスキームを利用して検討します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NPO事業支援協議会加盟のNPO法人は、事業経営者・債務者の立場を重視する事業再生指導、経営支援を行っています。 ・NPO首都圏事業再生支援センター ・NPO関西事業再生支援センター ・NPO東海事業再生支援センター ・NPO東日本事業支援機構 ・NPO西日本事業支援機構 ・NPO湘南事業支援パートナーズ ・JSK事業再生研究会-Tel:03-5367-1558 Fax:5367-1668 3.事業再生にネットワーク体制が必要な理由 ここで気をつけたいのは、デューデリジェンスを大きく3つに区分するといっても、それぞれは多次元で複雑に絡みあっていますので、明確に区分することはできません。たとえば、不動産のデューデリジェンスにおける資産のオフバランス化は貸借対照表に影響を及ぼしますし、事業デューデリジェンスにおける商品の将来展望は今後のキャッシュフロ-等財務に深く関係してきます。だからこそ、各デューデリジェンスの専門家のネットワークが必要になってくるのです。各デューデリジェンスのセクションがそれぞれ独立していて、他のセクションに影響を及ぼさなければ、各セクションで独自にデューデリジェンスを進めれば済むわけです。 しかし、前記した通り各デューデリジェンスは相互に影響を及ぼし合いますので、各デューデリジェンスを担当する専門家同士が密に報・連・相を行いキャッチボールし合うネットワーク体制が有効になってきます。 例をあげますと、債務を抱えて事業の再生を希望する人が、ある専門家に相談に行って、その専門家は事業や不動産のことをよく検討せず、財務デューデリジェンスの一方向だけから判断して「破産」しかないと判断したとします。すると、その事業は簡単に幕を閉じてしまうことになるわけです。その事業価値について充分デューデリジェンスせず、何十年、何百年継続して先任が培ってきた事業にアッサリと終止符を打つのです。ジ、エンド、その事業は社会にとって貴重であるかもしれないのに、です。 こんなとき、ネットワーク体制を組んでいれば、多角的に事業等を鳥瞰しますので再生できるケースもあります。まずネットワーク体制では、財務、事業、不動産の各専門家が多角的に事業等をデューデリジェンスし、各デューデリジェンスの結果を持ち寄って分析検討します。財務的に債務超過であり借金を返済できそうにないので破産もやむを得ないという結果がでても、事業的には収益は安定しており事業の将来性も見込めるという結果が出れば、最終的に、この事業は再生できると判断する場合もあると言うことです。 4.ネットワーク体制だから事業再生がアップ さて、事業再生ができると判断したら、次のステップでは、事業再生に向けての具体的なスキームを組みます。まず、存続できる事業と切り離す事業を分けて再生の基本方針を明確にし、そのための最良な方策を考案します。その過程の中では、営業譲渡、会社分割、M&A等の手法を駆使し、時にはSPC、ファンド等の受け皿も準備してベストなスキームを組みます。このような専門的スキームを組めるのもネットワーク体制を組んで各分野のプロが協力体制を構築しているからです。 以上のようにネットワーク体制は、事業再生に入るまでのデューデリジェンスに、事業再生に入ってからの各種スキームの実行に、なくてはならない体制であり、ネットワーク体制の総合力で挑むから、事業再生の確立はアップします。 NPO法人東海事業再生支援センターには各専門家が揃い、事業再生をネットワークで支援する体制を整えていますが、このネットワーク体制こそが、NPO法人東海事業再生支援センターの「存在意義」であり「力」なのです。
by bfl-info
| 2007-07-09 13:37
| 事業再生コラム&提言
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