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■中小企業の事業再生:第2会社方式の新たな課題-3
詐害行為取消訴訟のリスクにどう対応するべきか-2

   NPO東海事業支援機構理事、弁護士 佐久間信司、2011年1月8日(寄稿)

3 主要な論点についての裁判所の厳しい判断

この訴訟の主張な論点は、会社分割への詐害行為取消権の適用の可否、新設分割の詐害性の判断、取消しの範囲及び原状回復の方法の3点でした。それらについての裁判所の判断を簡単に見ておきます。

① 会社分割への詐害行為取消権の適用の可否(ⅰ分割者の主張 ⇒裁判所の判断)

ⅰ 会社分割は組織法上の行為だから詐害行為取消の対象にならない
 ⇒「新設分割が会社法に基づく組織法上の法律行為であるとしても、新設分割は、分割会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を新設会社に承継させることであり、分割会社から新設会社への財産の移転を要素とし、分割会社の一般財産を減少させうる行為であるから、財産権を目的とする法律行為というべきである」とこれを排斥しました

ⅱ 新設分割による会社設立は法人格の取得を目的とするいわば身分上の行為であって財産権を目的とする法律行為ではない
 ⇒「法人格の取得という面に着目して新設分割による会社設立をいわば身分上の行為であるということができるとしても、そのことによって新設分割が財産権を目的とする法律行為でなくなるものではない」としました。

ⅲ 民法は個人間の取引行為を規律するもので新設分割には適用がない
 ⇒「民法は…一般法であり、会社であっても、会社法等の特別法に規定がない事項については民法の適用を受けることは当然」としました。

ⅳ 詐害行為取消権は、債権者全員に対する債務を返済するに足りる資力がないときに特定の債権者だけに対してなされた返済の取消しを請求することができる権利であるが、新設分割は会社組織の再編をしたものであり資産が一部の債権者に移転したものではない
 ⇒「詐害行為取消権は、総債権者の共同担保となるべき債務者の一般財産を保全し、債権者を害する債務者の一般財産減少行為を取り消して、逸出した財産を返還させ、又は返還に代えてその価格賠償をさせることにより債務者の一般財産を原状に回復させるための制度であり、広く債権者を害する財産権を目的とする法律行為が詐害行為取消権の対象となるのであって、特定の債権者に対する返済などだけを対象とするものではない」としました。

ⅴ 新設分割は、多数の利害関係者の活動に影響を及ぼし、法律関係の安定が要請されるため、会社法は、法律関係の画一的確定を図り遡及効を否定した新設分割無効の訴えを定めている。既に組織として生まれ、そこに多くの関係者が関与している新設会社を、詐害行為取消権の対象とすることは誤りである
 ⇒「新設分割無効の訴えと詐害行為取消権は要件及び効果を異にする別個の制度であり、新設分割無効の訴えの制度があること、あるいは新設分割による新設会社に新たな法律関係が生じていることなどによって、新設分割により害される債権者の詐害行為取消権の行使が妨げられると解すべき根拠はない」としました。





② 新設分割の詐害性、詐害の意思の有無

ⅰ 新設分割により新設会社が承継した純資産に相当する対価が株式という形で分割会社に交付されているから、会社分割の前後を通じて分割会社の資力に変動はないから本件新設分割には詐害性がない
 ⇒「詐害行為となるか否かについては、単に当該法律行為の前後において、計算上一般財産が減少したか否かという観点からだけではなく、たとえ計算上は一般財産が減少したとはいえないときでも、一般財産の共同担保としての価値を実質的に毀損して、債権者が自己の有する債権について弁済を受けることがより困難となったと認められる場合には、詐害行為に該当すると解するのが相当である」とし上記主張を排斥しました。
 ⇒「本件会社分割により、一方で、被告ユニ・ピーアールの保有する債権を中心とするほとんどの無担保の残存資産が逸出して同被告は会社としての実体がなくなり、他方で、同被告が対価として取得した被告クレープハウス・ユニの株式は、非上場株式会社の株式であり、株主が廉価で処分することは容易であっても一般的には流動性が乏しく、被告ユニ・ピーアールの債権者にとっては、株主名簿を閲覧する権利もなく(会社法125条2項)、株券が発行されればより一層、これを保全することには著しい困難が伴い、さらに、強制執行の手続においても、その財産評価や換価をすることについては著しい困難を伴うものと認めることができる。そうすると、本件会社分割により、同被告の一般財産の共同担保としての価値を実質的に毀損して、その債権者である原告が自己の有する本件被保全債権について弁済を受けることがより困難となったといえるから、本件会社分割には詐害性が認められるといわざるを得ない」と詐害性を肯定しました。

ⅱ 新設分割が分割会社の債権者を害することを分割会社及び新設会社が知らなかったこと(債務者及び受益者が善意だったこと)
 ⇒被告ユニ・ピーアールの代表者が、本件会社分割により、原告を含む同被告の債権者が有する債権について、債務超過にあった同被告の一般財産から弁済を受けることがより困難となり、債権者が害されるとの認識を有していたことを認めることができる(なお、被告クレープハウス・ユニが善意であったことの主張・立証はない。)としました。

③ 取消しの範囲及び原状回復の方法

i取消しの範囲については従来の判例を踏襲し「本件会社分割を詐害行為として取り消す範囲は、詐害行為の目的物が可分である場合として、債権者である原告の本件被保全債権の額を限度とするというべき」としました。
ii原状回復の方法としても従来通り「債権者である原告にとって、承継された…資産を特定してこれを返還させることは著しく困難であるから、…原告は被告クレープハウス・ユニに対し、逸出した財産の現物返還に代えてその価格賠償を請求することができる」としました。
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つづく 【お問合せは sugita@kaikei-web.co.jp まで】
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by bfl-info | 2011-04-07 18:20 | 事業再生コラム&提言
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