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BFL経営財務研究所は、JSK事業再生研究会やアジア進出研究会の活動を通して税理士、弁護士はじめ経営コンサルタントの先進的なアドバイザリー業務を支援しています。
by bfl-info
BFL経営財務研究所たより 2006年12月
ごあいさつ 2006年12月

2006年が暮れます。読者の皆様にとって2006年は、如何な年でしたでしょうか。平穏、順調、改革、飛躍など明るく前向きなイメージであることを願います。
私の2006年は、激変・乱調だったと評しています。詳細な報告は別な機会に譲りますが、希望外・想定外の出来事が多すぎました。でも、それらの出来事を果敢に乗り切ったともいえます。

我が事から視線を周囲に向けますと、なにやら政治や行政がざわついています。自民党員の圧倒的な支持を受けてスタートした「安倍内閣」に落ち着きがありません。安倍政権の相次ぐ閣僚辞任とういニュースを入り口として、世相を分析してみます。

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以下、[12月19日(12:24) NIKKEI NET]ニュースより引用

『本間氏問題、閣僚から進退問う声』

政府税制調査会の本間正明会長が公務員官舎で親しい女性と同居中などと報じられた問題を巡り、19日の閣議後の記者会見で閣僚から批判の声が相次いだ。佐田玄一郎行革担当相は「出処進退は自分で考えていただきたい。襟を正してほしい」と本間氏の進退に言及した。
この問題では与党内に本間氏の辞任論が浮上している。ただ安倍晋三首相は「職責を果たしてほしい」との立場。塩崎恭久官房長官も19日の記者会見で、本間氏が18日までに公務員官舎を退去したと明らかにしたうえで「税調会長の責任を全うしてほしい」として辞任の必要はないとの認識を示した。
閣議後の記者会見では麻生太郎外相が「うわさ通りなら常識的ではない」と指摘。菅義偉総務相は「(進退は)本人が判断することだが、説明責任もあるのは当然」と語った。若林正俊環境相も「これだけ不信感を買うと、姿勢を本人が明らかにしなければいけない」と本間氏による十分な説明が必要との認識を示した。
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このニュースには、さまざまな憶測や次の展開が用意されていました。先ず、同じ閣内から責任追及の先人を切った「佐田玄一郎行革担当相」が、その1週間後に自身も辞任するという落ちが付いていました。三流シナリオライターでも書かないような筋書きが現実に起きています。

政府税制調査会の本間正明会長の不適切な行動は、なぜこの時期に発覚したのでしょうか。その前に、官舎に知人を暫定的に住まわせることが、税調会長を辞任しなければならない程の悪事なのでしょうか。国政赤字を垂れ流しながら、赤坂や青山の一等地に官舎を作り続ける役人の方が、財政的な大悪人です。情報の出どころはともかく、本間正明会長は「官舎を減らして財政再建を急げ」といったが故に「ある種の高級官僚に刺された」と噂されています。自民税調が「消費税アップ」を前提に議論を進めている中で本間氏は「出(いづる)を制し・・」などと反官僚的なことを論じていたのも原因のひとつだったと言われます。

この話に対しては、役人はそこまで(政府委員の首を切る)やるのか、という疑問がわきます。多分彼ら(官僚)は、やるのです。また、これまでもやってきたのでしょう。これからも彼らの必要に応じて、やるでしょう。
しかし、やると言っても彼らにそのような力(パワー、権力)があるのでしょうか。基本的に官僚にはそのような権限はありませんが、政治家やマスコミを利用することによって擬似権力を持つことになります。

ここで国家運営のガバナンスをおさらいしてみます。
官僚はなぜ、メガバンクの頭取(代表取締役)の首をすげ替えたり10兆円企業の役員を呼びつけたりするほどの権限があるのでしょうか。それは、官僚に国家運営の執行(権)を委任したからです。誰が官僚に委任したかというと、究極は私たち国民(有権者)です。表面的には、政治家が委任します。政治家といっても、そのリーダーである内閣総理大臣がその任に当たります。政治家を選ぶのは有権者ですから、国民が選んだ代議士が国家運営を役人に委任しその活動を監視しているので、主権在民といわれるわけです。政治家(代議士)を選ぶ選挙はそう頻繁にないので、その穴埋めとして政治家や官僚の監視役をマスコミが担うとなっています。





中学生向けの講義ではありません。今説明した、ガバナンスが正しく機能していれば、多分、官僚の暴走的権力行使は防ぐことができます。本来、機能として牽制したり抑制したりするべき、市民と政治家と官僚が癒着したためにチェック機能が毀損していきました。市民と政治家の癒着は、あまねく国民の幸福と国家繁栄の契りというようなものでなく、票と助成事業誘致の関係であったり、産業助成と組織票だったりします。金を軸とする近視眼的な応援構造に過ぎません。

政治家と官僚の癒着はもっと単純です。役人には権力はありませんが、国家予算を執行するという権限が委任されています。国家の金を思うままに使うためには、権力者に近い(有権者から選ばれた)政治家を仲間にし、この政治家を裏からコントロールすることによって、この邪(よこしま)な思いを実現させます。

国民から信頼され「先生」呼ばれ、分別や知識の豊富な代議士たちが、そんな簡単に役人の手に落ちるのだろうか。これが意外と簡単に落ちるのです。族議員と呼ばれる代議士の行動を分析するとわかります。彼らが、簡単に官僚に取り込まれる原因は、有権者にあります。国民とか市民とか言われる有権者の一部に「欲しがる」、「おねだり大好き」な方がいるのです。この「おねだり有権者」が、道路や体育館、助成金、補助金、郵便局、新幹線の駅など実にさまざまなものを欲しがるのです。彼らの欲しがるものを与える(与えるというだけでも)と「先生」と呼ぶ声が一段と高くなり、次の選挙の票集めに尽力します。
国民は国政の主権者として、ねだるのではなく、監視機能を発揮しなければ正しいガバナンスは維持できません。

話を、本間正明氏に戻します。社会のリーダーの一人として不適切な行動をし、これを咎められたので辞任は仕方がないかもしれません。しかし、マスコミと市民が役人とこれに癒着する議員の三流シナリオに疑問を呈し反発をしないようでは、これからが心配です。安倍内閣も成っていません。前総理であれば、古い体質に戻ろうとする自民議員と官僚の今回のような共同作業を牽制したはずです。
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次に、佐田玄一郎行革担当相の辞任劇をどのように観るのか。本間氏辞任で傷ついた人たちの逆襲と観るべきか、打倒安倍政権を目論む人たちの追撃弾なのか、或いは第三勢力の初弾なのか現時点ではわかり難いものです。私の推測では、小泉政権前の自民・官僚体制の再構築を望む層が、安倍政権の院政化を狙った所作と考えます。その懐古願望は、政治家よりも官僚のほうが強いと思えます。
ただ、安倍政権側もまだ完敗では無いようです。佐田氏の後任に改革推進派の渡辺喜美氏を配したことにやや希望が持てます。ただこれが、単に副大臣だったから昇格させたというのでは情けなさ過ぎます。
この辺の動向は、2007年も見守りたいものです
by bfl-info | 2006-12-08 10:31 | 経営財務研究所たより
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