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BFL経営財務研究所は、JSK事業再生研究会やアジア進出研究会の活動を通して税理士、弁護士はじめ経営コンサルタントの先進的なアドバイザリー業務を支援しています。
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■中小企業の事業再生:第2会社方式の新たな課題-1
第2会社方式による、中小企業の事業再生に係る新たな課題
                  JSK事業再生研究会 杉田利雄 2011.4.7

■会社分割に係る2つの重要な判決

● 破産管財人による否認権行使を認めた福岡地裁、平成21年11月27日判決(概要)

■この事件では、分割会社の破産管財人が詐害行為であるとして、濫用的会社分割を否認したというもので、新設会社が否認決定に対して異議を申し立てた。

福岡地裁は、会社分割を否認権行使の対象と判断して、請求を棄却しました。
⇒本件では個々の財産を返戻でなく,財産相当額の償還を示唆

【異議申立人の主張】
・会社分割を無効にするには会社分割無効の訴えによらなくてはいけない、と主張。

⇒会社法は、会社分割の効力を争うには、会社分割無効の訴えによらなければならないと定めており(会社法828条1項10号)、会社分割の無効について、期間制限等厳格な要件の下に、組織法的、画一的処理を予定しているのであって、破産法の否認の規定は適用されない等と主張する。
しかしながら、破産法に定められている否認権行使の要件は、会社分割の無効原因とは必ずしも一致するものではなく、また、その効果は、対象となっている行為による財産権の移転を当事者間において相対的に否定するにとどまり、会社の組織法的側面に影響するものではないのであって、上記会社法の規定の存在をもって、直ちに、新設分割について否認権行使が許されないと解することはできない。

⇒会社分割ができる会社については制限がなく、債務超過会社でもできると解されていることと債務者に変更がない債権者には会社分割の訴えの原告適格がないことから、債権者異議さえやっていれば、それらの債権者との関係ではすべからく会社分割できてしまうということを立方的に決断したのだ、とも主張している。




【地裁の判断】
・会社分割を否認権行使の対象と判断して、請求を棄却
⇒会社の不採算部門対策目的の会社分割や債務超過会社の会社分割が許容されるとしても、これらの場合に、当然に否認の要件を満たすといえるものではなく、新設分割の計画内容によって、否認の要件を充足する場合とそうでない場合があり得るものであるから、これらのことをもって、会社分割が直ちに破産法上の否認の対象とならないとはいえない。
⇒さらに、会社法が上記のような場合に債権者保護が不十分であることを許容した上、会社分割について、否認権等の行使を排斥する趣旨で立法されたと解する根拠は文理上何ら見当たらず、他に立法過程等において、そのような趣旨をうかがわせる資料もないのであって、会社分割における債権者保護手続の存在をもって、会社分割について否認等の規定の適用を排斥する根拠とすることはできない。
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● 新設会社の法人格否認を認めた福岡地裁平成22年1月14日判決

・会社分割において、信義則上、新設分割設立会社の法人格が否認され、新設分割設立会社は新設分割会社と同様の法的責任を免れないとされた地裁判決。

【原告の主張】
被告 Y1(新設分割会社)が行った新設分割において、被告 Y2(新設分割設立会社)に承継されなかった債務に関し、その債権者が、新設分割設立会社の法人格の否認を理由として、Y2(新設分割設立会社)に対し、債務の履行を請求した
【地裁の判断】
福岡地方裁判所は、本件新設分割手続きが、被告 Y2 が原告に対する債務の負担を免れようという不当な意図、目的に基づくものであること及び、被告Y1、Y2 に強い経済的一体性があることを認定した。
その上で、原告との関係では、信義則上、Y2 の法人格を否認し被告 Y1 とY2 を同視するのが相当であり、本件貸金債務について、被告 Y2 は被告 Y1 と同様の法的責任を免れない、とした。
なお、新設分割に対する異議は、会社法810条 1 項2号により、「新設分割後に新設分割会社に対して債務の履行を請求することができない新設分割会社の債権者」が述べることができると規定されているにとどまり、本件のように、新設分割設立会社に債務が承継されず、新設分割会社に債務の履行の請求が可能である場合には、当該債権者は新設分割に関し異議を述べることができない。

■中小企業の事業再生に与える影響と課題
2件の判決例をみる限り、裁判所は、倒産の危機に瀕している会社が行う会社分割手続において、GoodとBadに分割した事業であっても、弁済を履行していく債務と履行しない債務とを債務者が自由に仕分けするといった事案に対して、債権者間の公平に著しく反する分割である場合には、残された債権者を保護しようと判断しているといえます。今後の事業再生スキーム構築の大きな影響を及ぼす判例となりました。
以上
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by bfl-info | 2011-04-07 17:38 | 事業再生コラム&提言
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